今月 9日に受験した 1アマの試験結果が本日日本無線協会からメールで送付され、無事合格することができました!本格的に 1アマ試験勉強を始めて 3ヶ月の結果です。
正答は試験 3日後の 12日に発表されていたので答え合わせをして、法規が 143/150 (95%), 無線工学が 129/150 (86%) だったので「自信は無い」と言いつつも大丈夫だとは思っていましたが、正式に発表されてホッとしました。
試験直後に書いたように私にとっては過去問より難易度を上げた合成抵抗をを求める問題とか、あまり主題されていなかったと思われるバランの計算問題、ベクトルネットワークアナライザという聞いたことのない機器の問題など何問か手こずりましたが、確信は持てないなりに常識的な選択肢を選ぶことでそれらの問題でも半分以上は正答することができていました。
私が合格できたのはたまたまかも知れませんので、「こうすれば合格できる!」なんて偉そうなことは言えないのですが、私なりの工夫をご紹介しておこうと思います。
- 「深い理解」より「解けるようになる」ことを選ぶ
- テキストの理解/暗記と問題集を繰り返すことのバランスを考える
- QCQ 企画の直前講座を受講した
- 自分に合ったモチベーションを維持する方法を続ける
- 一番は 3級 → 2級 → 1級 と流れで勉強したこと
「深い理解」より「解けるようになる」ことを選ぶ
これは自分でも悔しいのですが、「ちゃんと理解してから先に進む」ことは準備期間の短さと自分の頭脳を天秤にかけて早々に諦めました。一番難しいのが電磁気学などテキストの最初の部分で、最後まで磁界と磁束の違いをちゃんと説明できるようにはなりませんでした。ただし、「何が分からないのか?」だけはしっかり考えておくようにして、可能な範囲でネット情報はチェックしました。ネットには YouTube も含めて結構参考になるサイトがたくさん有るのですが、これらを楽しく視聴しているうちに時間ばかり経ってしまうので、どこかの段階で「仕方がないけれど公式だけ覚えて乗り切ろう」と前に進むことを重要視しました。
テキストの理解/暗記と問題集を繰り返すことのバランスを考える
上の話と関連しますが、最初は「基本をしっかり理解すれば関連問題は初見でも解けるようになるはず」と高尚なことを考えていたのですが、やはり出題パターンをわかっているのとそうでない場合では天と地ほどの差があることを痛感し、テキストを読んである程度の理解ができたら細かいところには拘らず問題集を解いていくようにしました。その結果テキストを読んでもはっきり理解できていなかった部分が明確になるなど効率的に勧められたのではないかと思います。
逆に問題集を繰り返した後に「もう一度テキストの内容を整理して読んでみよう」と立ち戻ってみるとまた理解が進むこともありました。
使ったテキストは「集中ゼミ」
使ったテキストは「第一級アマチュア無線技士試験 集中ゼミ」です。新刊で内容が新しいだろうということ、書店で実際に手に取ってみて解説の構成が分かりやすいことの 2点が気に入りました。単に解説の文章がひたすら続くのではなく、適度な解説の量とポイントの整理が見やすくまとまっていて、実際に使いやすかったと思います。ただし後々分かったことですが、頁数削減のため?一部本文での解説を割愛してその内容は問題の解説に含めていたり、イラストの吹き出しにキーポイントが書いてあったりするので、全ての問題に目を通しておく必要があると思います。それでもいくつかの過去問に関する解説が無かったような気がしますが、そういった点を差し引いても試験直前まで何回も読み直しました。
問題集は「第1級ハム国家試験問題集 2020/2021年版」だけど
問題集にはあまりこだわりなくこの本にしました。強いていうと巻末に公式集があるので決めた感じです。書店で選んだのであまり多くの問題集を比較した訳ではありません。
使い始めいきなり公式集に誤りがあるのに気づき(コンデンサの容量計算)、この本に対してネガティブな気にもなりましたが、「集中ゼミ」で問題を解いた後にはこちらの問題を解いていました。最初のうちは....
後で書きますが、QCQ 企画の「国家試験直前対策」講座(3月中旬の 1日コース)を申し込み、送られてきた QCQ の問題集に乗り換えることにしました。結局こちらを 3回以上繰り返しました。どちらの問題集でも内容としては過去問とその解説なので大した差はないのではないかと思いますが、この問題集を前提に QCQ 企画の予想問題が選定されていたのが乗り換えた理由です。ただし活字を大きくするためかテキストもデカくて重いので試験当日これを持って会場に行くのが腰痛持ちの私には辛かったです。
暗記アプリ -- Anki
昔の暗記カードのスマホ版、と言えば良いのかスマホベースの問題集を作れるアプリと言うか、そんな感じのアプリで、JQ3BOI さんのブログで紹介されていたのを参考にして使ってみました。
簡単に今回の私に取ってのメリットを挙げると
- パソコン、スマホ、タブレットで同期できる。(私の場合は Mac と iPad)
- 問題集でもネットの記事でも気になったものを画像 (PNG, Jpeg) にして貼り付ければ簡単に問題集ができる。解答や注釈も画像でも良いしリッチテキストでもその問題にふさわしい方法が使える。
と言うことだと思います。Cons は、
- iOS 版は有料
- コンテンツの追加編集に関して高機能すぎることと UI が今ひとつ。
最初このアプリの高機能さに惹かれて「よし使いこなすぞ!」とアプリの機能や使い方を調べ始めたのですが、機能の調査で泥沼にハマりかけたので適当なテンプレートをそのまま使いました。基本的に HTML のようなのでフィールド属性が無いため、問題フィールドも解答フィールドも必要に応じて PNG をコピペしたり文字で問題を書いたり適当に使いました。
QCQ 企画の直前講座を受講した
以前から「ハムのラジオ」と言う Podcast を聞いていたのですが、毎回スポンサーに QCQ 企画という会社がアマチュア無線関連の講習会などの広告を出しています。この広告が結構長いのでいつもスキップして聞いていたのですが、それでも「国家試験直前対策」というものを開催していることは頭の片隅に残っていました。前回も書きましたが、2月から勉強を始めてその中旬にはあまりにも進捗の遅さに焦っていて、ある日 QCQ 企画の広告を思い出して「これ受けてみよう!」とすぐに決めました。
対面での講義は役に立った
直前講座は 03/19 に開催され、午前中 2時間、午後 3時間の集中講座でした。受講案内にも書いてありましたが、一通りの勉強をやった人向けなのであまり基本的なことから遡ることはありませんでした。基本的には自分の理解の確認となって良かったのですが、それまで難易度が高くて自分の勉強では飛ばしていた部分の解説もあったので聞いてもすぐには分からないまま必死メモを取っていました。でもそれは後々役に立つことになりました。試験終了後にチラッと書きましたがトランジスタの増幅回路の等価回路の説明がありました。正直講義を聞いているときにはよくわからなかったのですが、「この問題は難しく考えないでください。これはオームの法則の問題なのです。」と何回か念押ししていましたので、とりあえずその通りの文言を書いておくだけでしたが、試験直前に諦めきれずにこの問題に再チャレンジ。その際に「オームの法則で解く」という言葉の意味を考えてどこに適用出るのだろう?と問題集の解答を見ながら考えてみると、「お、そっか!」と。
実際の試験ではトランジスタではなく FET でしたが全く同じことだとわかり、嬉しくなりました。これで残りの難しそうに見えた問題にも諦めず考えを巡らすことができたのが今回の合格の大きなポイントだったと思います。
またこれも講義を受けてもちゃんと理解できなかったのですが、ある地点の電界強度を求める公式。これは暗記するにしても非常に辛くて嫌で嫌で仕方がなかったのですが、「直前講習でやるのだから仕方がない、なんとか公式を1日だけでも覚えていられるように暗記するか」と少しだけ時間を割いたのがしっかり出題されたのでラッキーでした。
いずれにしても独学だけではなかなか得られない刺激を受けて受講してよかったと思います。
ただし、厳選された少数の予想予想問題をコッソリおしえてくれる、なんてことは無いのでそこはお間違い無く。
教材
何種類かの資料が送付されてきましたが、主なものは上で紹介した問題集と「直前対策資料」という冊子。この冊子に過去の出題傾向マトリックスと、今回の出題予想問題(問題集の番号)が掲載されています。勉強の進捗に遅れを感じていた私はテキストが送られてきた時点で問題集の全ての問題を解くことを諦め、この予想問題だけを確実に解けるようにすることを目標にしました。とはいえピンポイントの少数の予想問題があるわけではなく、「この辺りは直近に出たので出なさそうだ」という部分のみを排除をしているだけで、全体の 7,8割前後が出題予想範囲になっていた感じです(正確に数えてはいません)。それでも予想問題には入っていなかったトランジスタの静特性曲線と h パラメータが出題され慌てました。たまたまですがこれは "hfe" が電流増幅率であると知っていたこと、ベース電流が関連するのは入力側のインピーダンスだろうと想像できたことでクリアできました。これがその場で「解けた!」と実感できたことによって、お初の問題ももある程度食い下がって問題文と選択肢を注意深く見て明らかな誤りを排除できたような気がします。
もう一つ宣伝をしておくと、hfe を電流増幅率だと知っていたのはテキストで覚えたのではなく 2アマの試験勉強中に「図解でわかる電子回路」を読んだ際に頭に残っていたのです。もちろんテキストにも載っていますが QCQ の予想問題範囲外だったのでテキストもスキップしていました。
自分に合ったモチベーションを維持する方法を続ける
私のようなアマチュア無線をかじった程度のレベルでは 1アマをもっていても豚に真珠になるのは明らかなのですが、アマチュア無線としての興味よりは電気/電子工学とその延長の無線機、というところに関心がありました。ですので最初は電気/電子工学のサイトを色々読んでいたのですが、特に YouTube は本当に凄い!と実感しました。以前にも紹介しましたがイチケンさんの基礎的な電気/電子工学の実験動画や熊五郎さんの見事な分解修理の様子に憧れ、別府さんの「高校数学からはじめるソフトウェア無線 超入門」で「電子回路は「通信機」のために生まれた」という件で「そうなんだ〜!」と感動し、「もっともっと知りたい!」とモチベーションを保ち続けることができました。
別府さんのコンテンツと同じ "Digi-Key日本公式チャンネル" には「ゼロから学ぶDC/DCコンバータ基礎講座」というものもあり、1アマの範囲をはるかに超えたレベルの内容ですが結構基礎的な説明も多くあり、今試験勉強としてやっていることが単なる試験のためだけのものでは無いんだ!と思いつつアマチュア無線テキストとは少々ニュアンスの異なる説明がかえって分かりやすかったりしました。
村田製作所など半導体メーカーなど基本をイラストや動画を使って説明してくれているサイトは山ほどあります。これらにはのめり込んでは時間がいくら合っても足りませんが言葉は悪いですが無線関連のテキストのイラストよりずっと分かりやすいです。
あとは電験対策や物理の講座の YouTube チャンネルでは分かりにくい点の解説や暗記の仕方も含めて整理してくれているサイトも多くあり、役に立ちました。
コンデンサの変位電流 hegtel.com
抵抗の温度計数、力率、半波整流、コンデンサ整流波形、 youtu.be
一番は 3級 → 2級 → 1級 と流れで勉強したこと
いろいろ書きましたが、なんだかんだと言っても、私にとっての 1アマ合格の最大のポイントは、定年後の自由な時間をフルに活用して、去年の 11月から半年弱の間に連続して受験及び勉強できたことだと思います。私の場合は無線に関しては 30年以上前にとった 4級しかバックグラウンドがなく、それ以外に電気/電子工学を学んだことも無いし、そもそも無線の運用もほとんどしていませんでした。しかしそれぞれの級の勉強で覚えたことを忘れないうちに次に活かせるのは当然として、それぞれで合格しても残ったモヤモヤを解消したいと思いつつ次の段階に進んだのも良かったと思います。
若い方には私のような時間の使い方は無理かもしれませんが、モチベーションを高く保ち、上手く勉強していただければと思います。