KuriKumaChan’s diary

Kuri ちゃんと Kuma ちゃんの飼い主の独り言

部分廃線になる根室本線「新得〜富良野」に乗りに行った - 素敵な景色と地形

1月の中旬に根室本線を走る列車を乗りに行ってきました。

私は鉄ちゃんと言うほどではありませんが、鉄道は見るのも乗るのも好きなので、今年の 3月に廃線になってしまう「新得〜富良野」間を往復で乗って来たというお話です。

一番の目的は「廃線になってしまう列車に乗って郷愁に浸る」と言うことなのですが、車窓から見える冬の北海道の景色が素晴らしく、じっと見入ってしまうひと時の繰り返しでした。

さらに、広い平野と連なる山々に感動して改めて北海道の地形を再確認してくなたり、昔のフィルムで撮影した当時の景色をもう一度取り出してみようと思ったり...

もともとの目的である旧式の列車や駅舎などのノスタルジーに浸ることはもちろん、新たに北海道の魅力を強く感じることもできた上に前向きの気持ちになれたとても充実した 3日間でした。

なお、心揺さぶられる景色は沢山あったのですが、車窓からの写真ではガラスの反射などもあり写真を載せていないのはご愛嬌です。

JTB編「鉄道旅地図帳」より。空路帯広に入り、あとは帯広〜びえい間を移動しました。

根室本線の一部区間が廃線になるらしい

根室本線「滝川〜(富良野)〜(新得)〜釧路〜根室」は昔の札幌と道東を結ぶ中心的な役割を担っていたそうです。しかし1981年に南千歳〜新得の石勝線が開通することにより、今回廃線の対象となる「富良野〜新得」の旅客数が激減してしまいました。もっとも石勝線の開通だけではなく、道路整備の拡大と車による移動の増加も大きな影響を与えたのでしょう。
(詳細はこちら→JR北海道「輸送密度の推移(富良野・新得間)」)

さらにこれに追い打ちをかけたのが 2016年の台風による線路被害。線路と並行する空知川の氾濫が線路の至る所に被害を与え、わずかな旅客収入のために復旧を進めることができない状態が何年も続いていました。

JR北海道「根室線 東鹿越~上落合間 H28台風10号による被災状況」

そしてとうとう昨年 (2023年) 末に廃線の決定/発表に至ったと言うことのようです。詳細は下記「鉄道協議会日誌」さんのサイトに詳しく解説されていて、単なるローカル線の廃線をノスタルジーだけで反対するのは難しいと分かります。

tetsudokyogikai.net

なお根室本線としては「滝川〜富良野」と「新得〜釧路〜根室」に分断され残るようです。後者は石勝線とともに一定数の旅客はあるでしょうが、前者はやはり旅客数の減少に悩まされているローカル線として経営環境は厳しさを増していきそうです。

日程と経路 - 「新得〜富良野」を日帰りで往復する

今回は今まで利用したことがない「とかち帯広空港」から入ってみることにしました。
当日のうちに帯広から新得まで移動して宿泊すれば翌朝 08:00 新得発の「代行バス」に乗れます。新得から日帰りで富良野まで往復しようとするとこの便を含めて 3パターンあります(新得1357, 16:21発)が、帰りも景色を楽める時間に乗ろうとするとこの選択しかありませんでした。

「新得〜東鹿越」 - 代行バス

目的とする「新得〜富良野」間のうち、「新得〜東鹿越」は台風被害から復旧されておらず代行バス (ふらのバス) による運行で、「東鹿越〜富良野」間が鉄道の運行となっています。

鉄道は狩勝峠をバイパスする「新得〜落合」間の新狩勝トンネルを通りますが、バスは国道38号線を狩勝峠を経由して落合に向かいます。 新得を 08:00 に出発した代行バスは国道38号をサホロスキー場におまけ?で寄った後、狩勝峠を経て落合駅、幾寅駅に停車して東鹿越駅に到着します [08:00-09:08]。
実際にバスに乗る前は単に「列車に乗れず代行バスで残念」くらいに思っていたその車窓がとても素敵でした。

東鹿越えきに到着した代行バスと、出発を待つキハ40

「東鹿越〜富良野」 - キハ40 - これぞローカル列車!

東鹿越駅から富良野 [09:16 - 09:55] までが実際に廃線になってしまう鉄道路線となります。
ここでは「キハ40」。外見も昭和ですがボックスシートも向かい合った人と膝がぶつかってしまうような昭和感満載。帯広から新得に向かう際に乗った最新型ローカル線 ? H100 DECMO とは外観も車内も趣が異なります。移動の足として使うなら H100 の方が快適なのは間違いありませんが、ノスタルジーに浸るのであればキハ40でしょう。

東鹿越駅ホームのキハ40 (復路)
東鹿越駅で出発を待つキハ40

朝早い便のためか、ボックスの半分くらいの乗車

「帯広〜新得」間はローカル線と言ってもハイブリッドの H100 (この写真は釧路行き)

H100 のボックスシートは座席の間も広く快適!なのだけれど...

東鹿越を出発するとしばらくの間は空知川を堰き止めたかなやま湖を右手に見ながら西に進み、空知トンネルを越えると金山駅を経て北上して富良野に向かいます 。

富良野から美瑛まで足を延ばす (富良野線)

事前に決めてあったのは富良野に 10時前に到着た後は、戻りは富良野を 14:14発のキハ 40、東鹿越 15:13発の代行バスで戻ることだけでした。さすがに富良野駅で 4時間は長いので調べてみると、富良野から美瑛まで (富良野線) 行って昼飯を食べて戻って来ることができることが分かり、足を伸ばしてみました。
富良野や美瑛には札幌に住んでいる頃に何回も夏も冬も車で来たことがあったので、さほど期待せず「おまけ」のつもりでしたが、車ではなく列車から眺める景色は素敵でした。

車窓からの景色に見入る

今回は「ローカル線に乗る」ことがメインの目的であったのですが、計画時点では想像していなかった車窓から見える雪景色に何回見入ってしまったことか。
もちろん多分もう乗ることのないキハ40の車内や、閉鎖されてしまうだろう駅舎などの姿も味わったのですが、行きも帰りも雄大な雪景色に釘付けになっていました。

やはり自分で車を運転しながら見る景色とは全く違って、窓からぼんやり外を眺めることができるのが列車(代行バスも)の旅の良さでもあるのでしょう。しかも新幹線と違って風景が飛び去っていかず、適度に視界に残ってくれるので味わいは深いのだと思います。

狩勝峠と十勝平野(代行バス)

まず代行バスでサホロスキー場を過ぎたあたり。国道 38号を狩勝峠に向かってどんどん登っいくあたりで見える広大な十勝平野に目を奪われました。狩勝峠も自分の運転で確か夏と冬に一回ずつ通った記憶がありますが、こんなに景色をずっと見ていたのは初めて。
峠のピークに近づくあたりで眼下に十勝平野とそれを囲む山々が見えると、なんだか心がスーッと清めらてたような感じがしました。山道はたまに雪が舞うこともありましたが、平地は快晴。往路ではカメラやスマホを取り出すことも全く忘れて目の前の景色に見とれていました。

峠道と地形

狩勝峠を超えたあたりで「昔の人は峠道をなぜこのルートにしたのだろう?」という疑問が浮かびます。Google マップの平面図だけでは単に道がクネクネと曲がっているだけのですが、きっと訳あってこういったルートにしたはず。タモリではありませんが、地形をもっと理解して見たいと思いました。
そこで美瑛で昼飯を食べた後に iPad で「スーパー地形」という地図アプリをダウンロードし、帰り道に備えてルート (R38) が通る地形を確認すると雰囲気が分かりました。

「スーパー地形」で見た国道 38号線、狩勝峠付近。数字は標高。

新得から狩勝峠に向かう道は、一旦北上した後は佐幌岳の山腹に寄り添うようにサホロスキー場入り口を経て半円を描いて徐々に高度を上げ、佐幌岳南縁の切れ目にあたる狩勝峠を越えていることが分かります。この十勝平野を見渡すことができる素敵なルートは、難所と言われる狩勝峠を目指して出来るだけなだらかな登り道にするために佐幌岳に沿わしたものなのだと納得しました。

かなやま湖(根室本線、東鹿越付近)

次に見入ってしまった景色はかなやま湖畔。これは絶景!ということではなく個人的に過去に見た景色を思い出したのです。
東鹿越をキハ40で出発してから空知トンネルに入る前の間は、線路と並行している空知川が堰き止められたかなやま湖に沿って進みます。線路の対岸側には昔家族で行ったかなやま湖キャンプ場があります。今回行きも帰りも対岸がよく見えなかったのが残念でしたが、昔このキャンプ場から湖の対岸をローカル列車が走るのを見た記憶が蘇りました。
「あの時の列車はこの辺りを走っていたのかな?」
などと昔見たはずの景色を思い出します。多分当時もキハ40だったはずです。湖畔で遊んでいるときに何本か見たはずなので、便数は今より多かったのでしょう。
家に帰ってフィルムを調べると、1995年のことだったので約 30年前のこと。そんな昔の記憶も思い起こさせてくれる旅でした。

かなやま湖畔キャンプ場から根室本線が見える

十勝連峰、大雪山系(富良野線、富良野〜美瑛)

次は根室本線ではないですが、富良野線で富良野から美瑛に向かうときの東に広がる平原とその向こうにそびえ立つ山々。

「スーパー地形」富良野盆地(富良野、中富良野、上富良野)から望む十勝連峰、大雪山系

夏に富良野から中富良野付近を車で走るとどうしても反対側(西側)のラベンダー畑に気を取られますが、今はラベンダー畑があることすらわからない雪景色。そんな雪景色の中で目立つのは東側の大きな山々でした。中富良野を過ぎるあたりからは、さらにその奥に連なる山々が見えてきます。
これもあとで「スーパー地形」を見て確認すると、富良野駅あたりで目に飛び込んできたのは十勝連峰の富良野岳。上富良野までいくと十勝岳、美瑛岳、オプタテシケ山などが迫ってきていたのが分かりました。
美瑛までいくと、旭岳をはじめとする大雪山系が目に入ってきます。

地図で北海道の山々をじっくり確認したことが今までなかったので気づきませんでしたが、地名と同じ名前が付けられた山がたくさんあります。富良野から一番近い富良野岳はよく分かりますが、美瑛岳は富良野岳の少し北側にあり、上富良野より南に位置します。こういったことに気づくと、いったい山野名前と地名はどちらが先に付けられたのか?などと考えたりして、地図を楽しんで読む?ことができます。

日高山脈で天気が分かれる(飛行機、帯広空港離陸後)

最後に感動した景色は、帰りの飛行機。とかち帯広空港を飛び立ち十勝平野を南下して太平洋に抜けるまで見える快晴の日高山脈と、その向こうに見える雲に覆われた石狩平野。
私が訪れたのが1月の中旬なのですが、この間は北海道の日本海側(札幌から羽幌方面、千歳空港も含む)の天候が大荒れで、航空機の欠航などが相次いだようです。友人などが心配して連絡をくれたのですが、私の回った新得〜富良野あたりでは概ね快晴で悪天候の心配などありませんでした。

その札幌や千歳のある石狩地方と十勝平野の天気を分けていた理由が日高山脈の存在なのだと分かったのは、とかち帯広空港を離陸した直後の車窓(飛行機でも車窓?)から見えた景色。空港から見える日高山脈は晴れてはっきり見えるのですが、どこもびっしりと雲を背負っています。高度を上げて太平洋に出る頃には石狩平野の方まで見渡すことができ、日高山脈より向こう (西側) は完全に雲で覆われていたようです。石狩平野は大荒れでも十勝平野の快晴は日高山脈によってもたらされたものだと目で見て理解できました。

とかち帯広空港 RW17 から南に向けて離陸した直後。平野は快晴。向こうの日高山脈は雲を被っている。

夕張山脈の向こうは雲がびっしり。日高山脈が雲を押し留めていたのがわかる。

飛行機に乗っても窓の外の景色に心を奪われていたのですが、ふとスーパー地形アプリには GPS 軌跡を記録する機能があったことを思い出し、太平洋に出たあたりでオンにしました。太平洋上でその軌跡が始まっています。

とかち帯広空港 RW17 を飛び立つと日高山脈と並行して南下する。


今回の根室本線の旅は私にとってはとても有意義なものでした。あまり旅の話はブログには書かないのですが、心を動かす景色が多く、ついつい長々と書いてしまいました。
道内に住んでいてもそうそう出かけていかないこの辺り。本州からだとそもそも北海道に入るのが大事ですが、「新得〜富良野」間が廃線になってしまったとしてもまたゆっくり巡りたいと思います。

新得駅の看板に今は「落合」の表示がある。