KuriKumaChan’s diary

Kuri ちゃんと Kuma ちゃんの飼い主の独り言

フィルムのデジタル化 06 - 「一歩進んだ画像保存術、プロが勧めるNAS活用法」を受講してみた

2021年に昔々のフィルムのデジタル化を始めたのですが、やはり挫折していましす。
先日の根室本線の旅から戻り「昔フィルムカメラで撮影したやなやま湖の写真を見返えそう!」と思って、頑張ってベタアルバムから当時のカットを探し出しましたが、所詮ベタ焼きの小さな画像では物足りません。 やはり過去のフィルム写真もアクセスを容易にしディスプレイで確認できるようにしておくことは必要だと反省しました。
そんなこともあってフィルム写真のデジタル化の再開をしよう!と思っている時に丁度良いテーマのセミナーがありましたので受講してきました。

「写真保存センター」と言うことならフィルムのデジタル化に関するノウハウも聞けるかもしれないし、自分も利用している NAS のより上手な活用例も聞けるかもしれません!

www.jps.gr.jp

セミナーの概要 - 「一歩進んだ画像保存術、プロが勧めるNAS活用法」

セミナーの主催は「写真保存センター」

写真保存センターという名称を今回初めて知りましたが、日本写真家協会 (JPS) が運営している下部組織のようで、2001年の田沼武能さんによる「物故写真家の写真原板の保存の必要性」の提唱から 2006年に活動を始まったそうです。

「日本写真保存センター」の管理・運営は、公益社団法人日本写真家協会(以下、JPS)が行っています。

セミナーのテーマ

内容は質疑応答も含めて 4,5セッション。私の理解としては三つの大きなテーマがありました。

  1. 「日本写真保存センター」が行なっているフィルムのデジタル化とその保存に関する概要
  2. プロカメラマンが撮影時に活用する NAS へのデータ保存と共有
  3. Synology社による NAS の紹介

セミナーの内容

以下、私の理解に基づくお話の内容です。

1.写真保存センターで行っているフィルムデジタル化と保存

時間としては一番短かったと思いますが、私が一番興味を持ったのが、JPS 副会長の高村達さんのお話。実際に高村さんが経験してきた経験や苦労と、写真保存センターで現在行っている工夫を聞くことができました。

スキャナーからデュプリケーターへ - PENTAX フィルムデュプリケーター

素人の私も悩んだ「スキャナーかデュプリケートか?」という問題。プロも過去には同じように悩んでいたようです。もちろんスキャナーといっても私のような 35mm フィルム専用といったものではなく、ドラム式といった文字通り業務用スキャナーを使っていたとか、それでもフィルムへのダメージが避けられなかったとか。カメラの高画素化によってプロであっても、現在はスキャナーではなくデジカメによるフィルムの撮影に落ち着いているようです。
その際に用いているのは私も検討した PENTAX のフィルムデュプリケーター ということでした。

ただし、そこで説明されていたのは標準のフィルムマウントを用いるのではなく、ガラスホルダー(透明ガラスとノングレアガラスの組み合わせ?)でフィルムを押さえているとか、マスキングテープをフィルム留めに使っている?とか色々な工夫を話されていました。私が聞き漏らしたのだと思いますが、必ずしも状態が良いフィルムだけを扱うのではないため、カーリングを抑える目的なのだと思います。

会場も実機を展示してあり、休憩時間には人だかりになって高村さんがたくさんの質問を受けていました。メーカーの方もいらっしゃって質問を受けていましたが、残念ながらメーカーではすでに生産終了となったようです。
(アマゾンや量販店ではまだ在庫があるようです。)

ネガはトーンカーブで反転

質問して教えてもらったのですが、ネガの反転はトーンカーブで手動で対応されているそうです。
なんだかトーンカーブをマウス操作するのは効率悪そうですが、全体のワークフローの中では大した事はないのでしょうか。またカラーネガの場合のベース色の対応はどうするのか聞き忘れましたが、写真原板データベースに実際にアクセスして検索してみると、2024年 1月の時点では 2011年までの写真が収蔵されているようですが、軽く検索してみた限りではモノクロ写真のみでしたので、カラーネガの対応はこれからなのかもしれません。

撮影は GFX100 で 4カットまとめて撮影

そのフィルムデュプリケーターでフィルムを撮影しているのは GFX100 だそうです。
そしてほー!と思ったのは、35mm フィルムの 4カットをまとめて撮影しているとのこと。
GFX100 の 1億画素をもってすれば、パーフォレーション部分も含めた 4カットをまとめて撮影しても、1カットあたり 4K 画像分を担保できるから、とのこと。デジタル化作業も効率に行える、とのことでしたが、6コマのスリープを 2段ガラスホルダーにセットするのも熟練が必要なんだろうな、と思いました。

保存は外付け HDD → NAS

高村さんのお話を聞いていると、写真保存センター担当という役割以前から個人的にフィルムのデジタル化を進めていらっしゃったようです。
「こんなに HDD の台数が増えた時期があります。」とか、
「増えて容量の統一ができない HDD をまとめて使える NAS を使った。」とか。
多分 HDD の容量に制限されない NAS とは DLOBO のことだと思いますが、サポートが得られなくなって?現在では Synology の NAS を使うことになったとのお話でした。

NAS 自体のバックアップはバックアップ NAS で

これも質問して教えてもらったことなのですが、NAS 自体のバックアップはセンター内の別の NAS で行なっていて、クラウドバックアップは無いとのことでした。センター内の LAN は closed でインターネット接続されていないから、という理由でした。また火災など拠点被災の場合には、「最悪の場合は別サイトに保存している原板(フィルム)からまたデジタイズする。」という割り切りのようです。
セキュリティへの配慮は必要だとは思いますが、closed の LAN であっても繋いだ PC からウィルスが入り込む可能性はゼロではありませんし、人的な間違いで削除してしまうことはもっとあり得る話です。貴重だからこそデジタイズして保存している映像ので、しっかりしたネットワーク管理を施してクラウドバックアップすれば良いのになぁ、と思いました。

2. NAS の活用 - カメラから直接 FTP で NAS にデータ保存

このお話はプロカメラマンの井上さんのお話。「保管」のためだけではなく、「納品のためのデータ保存」に NAS を使う、というお話でした。プロ用の機材(ニコン、キヤノン、ソニーを例示していました)では撮影ファイルを(撮影と同時に)NAS に FTP 転送できることを利用して、転送先フォルダをクライアントや必要に応じて複数カメラマンと共有することで、クライアントの間で物理的なメディアの受け渡しの手間とリスクを減らすことができる、という活用例です。
とかくファイルサイズが大きくなりがちでプロなら連写してファイル数も膨大になりそうなので、間に携帯網が入ると辛そうだと思いましたが、1MB以下の JPEG での利用もあるなんてお話もありました。
私のようなアマチュア個人向けの話ではありませんが、どうやら聴衆の多くは JPS 加入者のようなので、お仕事の品質向上のために役立つのでしょう。

3. Synology 社による NAS の説明

聞きたかったのは Synology のアドバンテージだが

私の NAS である QNAP の 2代目である TS-453Be を使い始めてそろそろ 4年になるので、次はどんな NAS にしようかな?というのはうっすらと考え始めています。当然 Synology も気になるところなので「写真家向けに Synology だから選んでもらえるこのバリュー!」みないなものが聞けたらいいな、と思っていたのですが、正直言って「次は Synology にしよう!」と積極的に思えるようなお話はありませんでした。 実際に Synology の NAS を使ったことはないのですが、説明された内容はほぼ「QNAP のアレに相当する機能の話だな」という感じ。特に QNAP を贔屓することは無いのですが、逆に言えば NAS で差別化するのはなかなか難しいのが実情なのかな、というのが実感でした。
(ただし、日本語の情報は QNAP よりは Synology の方が多いようなので、こう言った機器が不慣れた方には Synology の方が良いかもしれません。)

「ファイル/フォルダー管理」に関する写真家側のディスカッションを聞きたいと思った

一部 NAS のファイルシステムの選び方、といったシステムよりの質問もありましたが、「ファイル/フォルダー管理」の工夫に関するものが何件もあったようです。JPS (日本写真家協会) 主催のセッションだったので質問者はプロのフォトグラファーがメインだと思いますが、プロでもファイル/フォルダー管理に悩んでいるのだな、と思いました。
しかし偉そうなことを言うと、この手の相談を NAS メーカー/ベンダーに投げかけてもそう有益な話は聞けないと思います。なぜならあくまでもベンダーはあくまでもシステム屋です。もちろんベンダーでも写真を趣味にしている人がいるでしょうが JPS 参加メンバーほどの写真の経験積み重ねがあるとは思えないからです。
現在では NAS などのファイルサーバーを写真「ファイル」の保存に利用しているプロのフォトグラファーは多くいると思いますので、NAS ベンダーに頼るのではなく JPS 側でに「プロが勧める NAS による写真ファイル保存方法」と言ったテーマで整理をしてくれると良いな、と思います。

ちなみに私は個人の理解としては、

  • ファイル名とフォルダ名/構造だけで全てを管理するのは困難

  • 「ファイル保存と管理」と「写真の管理」は別に考える

べきだと考えています。

自分のデジタル化に取り入れてみようと思う工夫

さて、人ごととしてのフィルムデジタル化はともかく、自分のデジタル化が進まないことにはお話になりません。今回のセミナーの受講して、基本的に自分がやってきたことに大きな間違いはないことはわかりました。とは言っても何か新しいことも取り入れたいものです。
さすがに GFX100 を導入しよう!なんて無駄なのですが、今後の作業では「テザー撮影」と作業量の可視化を準備しようかと思いました。

テザー撮影

撮影データをパソコンでリアルタイム確認できる仕組み。いちいちカードなどのメディアをパソコンに繋いでデータを取り込むことなく直接カメラからパソコンにデータを送信し、パソコンの大画面で撮影結果を確認できる仕組みです。(FTP 転送もその一手段?)。
高村さんの保存センターの処理に関するお話で軽く触れられていたような記憶があります。 たった一人で処理する趣味で撮影したフィルムのデジタル化をテザー撮影で行う大したメリットは無いと思いますが、明らかなミスカット (フィルムの水平が大きく乱れているなど) を撮影直後に気付けるのは良いと思います。オリンパス (OM System) のソフトの品質はあまり芳しい評判を見かけませんが、一度は試してみようかと。

作業量の可視化

高村さんの解説の中で、保存センターの収蔵する映像の量と、デジタル化完了の量のお話がありました。フィルム本数ベースの話だったのかコマ数ベースの数字だったのか忘れてしまいましたが、やはり処理対象の母数と完了数を把握しておくことは必要だな、と思いました。
私は気になったフィルムからデジタル化していたので、具体的に全部で何本の現像済みフィルムがあって、デジタル化が何本終わったかをすぐに把握する方法がありません。
もちろん NAS 常にフィルム単位で作成したフォルダーがあるので、その数を数えればデジタル化済み本数は分かりますが、例えば「198x年分はあと何本未処理フィルムがあるか?」と言うことはすぐには分かりません。

もちろんそんなこと分からなくても粛々と機械のように作業を進めていけば良いのですが、仕事ではなく趣味なので「あー、あの頃のデジタル化は歯抜けにしかやっていないな」とか色々思い出しながら進めていった方が楽しいでしょう。


【参考】

写真保存センター -「写真原板データベース」

写真原板データベース

photo-archive.jp

写真保存センター 「データベース化の方法」

スキャナーを利用されている頃の記事だと思います。
スキャナーだからデジタルベタ焼きも作成できていたと思いますが、GFX100 の4コマカットでは 6コマスリーブのベタはもう作成していないのでしょうか。
あと、データベースとしての写真管理には興味あります。一体データベースシステムとしては何を用いているのだろう?と思いました。 photo-archive.jp

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