KuriKumaChan’s diary

Kuri ちゃんと Kuma ちゃんの飼い主の独り言

黄斑前膜治療の体験 - 術後の経過と回復(認識していなかったリスクの回避も)

すでに黄斑前膜の診断から手術までをご紹介済みですが、よくある白内障手術だけを行なうのとは異なり、術後の影響がしばらく残り、日常生活にもそれなりの支障がありました。
一方手術の最大の目標である網膜の回復に関しては、前膜ができることによって引き攣るように?皺ができてしまった網膜の回復には時間がかかることや完全な回復を目指すものではないことは入院前から念を押されています。
さらに、事前に想定していなかったのがコンタクトレンズ装着を止めたことによる影響

また、自覚も無く事前診察では確認できていなかった網膜裂孔の存在がわかり治療ができたことは実は大きなメリットだったと思います。

後半となるこの記事では、右目が術後ほぼ一年、左目は 9ヶ月経過した現在の状況を書いておこうと思います。

結論として、先に一言で言えば「トータルでは手術してよかった」と思っています。
こういった経験は、AI に相談してわかる事ではないなぁとも思いました。

blog0.kurikumachan.com

術後の生活をざっくりと

術後の過ごし方に関しては多くの医療機関からネットでも紹介されていますので細かく書きませんが、簡単に私の場合を簡単に書いておきます。

「下向き」の体制

網膜という目の奥を手術をするにあたっては、一旦目玉の中にある硝子体という透明だったゼリー上のものを吸い出して代わりに液体を充填(硝子体手術)してから網膜の処置(前膜をピンセットで剥がす!)を行います。

液体自体は術後に体液?と徐々に入れ替わっていくようですが、治療した網膜に圧力を加えて押さえつけるために、液体だけではなくガスも眼球内に注入されます。 ガスは液体より軽いので、常に眼球の上方向(顔の上部、ではなく地面に対する空の方向)に位置します。網膜は目の奥にあるので、そこに圧力が加わるようにするには顔(身体)を下向きにして、眼球内で網膜が上側に位置するようにしてガスで網膜を下から押される体制をできるだけ維持するように求められます。
ガスは徐々に抜けて(その分体液が満たされる?)ガスが眼球を抑える効果も減るので、どのくらいの期間ガスの圧力をかける必要があるかによって注入するガスの種類を選ぶようです(減りにくいガスと減りやすいガス)。

私の場合は入院中は「極力下を向いて」という指示のもの日中も下を向いて寝ていましたが、退院後は「できるだけ下を向く / 上を見続けない」というレベルの指示となりました。おそらく私の場合は手術直後は網膜をできるだけしっかり押さえておきましょう、というレベルだったのだと思います(トイレや食事の際に顔を正面に向ける程度は構わないと言われていました)。

眼帯 / 保護メガネ

術後はアルミ製の眼帯を絆創膏で止められていました。しかし術後の翌々日の検査時に眼帯を外した後はそのまま眼帯なしの生活となりました。
ネット情報や、入院した病院で最初に見せられた案内ビデオでは退院後もスイミング用のゴーグルのような透明の保護メガネを推奨していましたが、眼帯をはずした医師に確認すると、「不安なら保護メガネをしても良いですよ」ということだったので、保護メガネは使いませんでした。

点眼薬と通院

術後、3種類の点眼薬を1日に4回、一回の点眼にあたっては一種類の点眼後別の薬を点眼するまでに 5分間をあける、というめんどくさいルーチンが始まります。入院中は看護師さんがチェックに来てくれるので良いのですが、退院後は気をつけていないと忘れそうになってしまいます。

退院後の通院はしばらく毎週、そして月に一回、3ヶ月に一回と病院での診察/確認は続きます。全ての点眼薬がなくなったのは 2ヶ月後でした。

術後影響 - 「しばらくはよく見えない」複数の要因

私の場合、「眼球内ガスが残留」、「飛蚊症」、「白目を縫った影響」といったことによる影響がありました。

注入ガスによる影響

これは時間の問題で解消するのですが、この影響がある間は車の運転は無理なくらいの影響がありました。

当初は多くのガスが残っていて、どこを見ても「水中でゴーグルなしで目を開けたような感じ」物体がぼんやり存在するのが分かる感じで細部は全くわかりませんでした。次第に「ぼんやりとしか見えない」部分と「ちゃんと見える範囲」の境界面が下がっていく、という経過でした。

術後眼球内に注入するガスは、最初は眼球の半分以上あったようです。

術後、眼球の半分以上がガス

この状態だと、光学的には倒立しているものを視神経と脳が上下反転してくれているので、視界の上部にちょっとだけちゃんと見える部分があるのもののほぼ全面がぼんやりしています。

ほぼガスが抜け切るまで2週間ほどかかりました。

飛蚊症による影響

私の場合、後から手術した左目の場合はほとんど気になるような浮遊物はありませんでしたが、先に手術をした右目の場合は結構盛大に大小飛蚊症が発生しました。さらに、ガスの境界面の周囲に黒い粒子が集まっている感じの違和感がこれも2週間ほど続きました。

術後の腫れ、縫合糸の違和感、傷跡の腫れ...

手術後終日は目が腫れている感じが残りました(そりゃそうです。黒目の周囲 3箇所に穴を開けてピンセットなどをつっこんでいるのだから)。それが落ち着くと縫合糸がチクチクと気になり始めました。その穴を糸で縫合してあったようです。糸自体は吸収性のものらしく、3箇所の中のうちの 1箇所だけ糸が長かったのか、吸収されきれていない糸がチクチクと気になりましたが、これは何回目かの診察の際に抜いてもらいました。

網膜の回復 - OCT 検査では明確に回復。「見え方」は...

肝心の網膜の回復は一番苦になるところ。ネット記事そうですが、町医者でも大学病院でも「黄斑前膜の手術で膜を除去」したことによる網膜の回復には
「術後にその効果はすぐに得られることは少なく、1ヶ月から1年くらいかけて改善が期待できる」
という説明(効果が十分では無いケースもよくあるよ、という discraimer も)を受けていましたので、大きな期待を抱かないようにしていました。

ちなみに、術後の OCT 検査(網膜の断面を映像で確認できる)では、前膜に引っ張られていた明らかな引きつった状態が平らになっていることは確認できて、外部からの測定という観点からはしっかり回復していることが分かります。しかし、実際に本人がどう見えるか?というレベルになるとそういった検査では分からず、本人の見え方というある意味測定不能な主観的なものになってしまいます。以下はその私の「見え方」ベースでの回復状況のお話です。

右目の歪みは大きく改善したが

私の場合、術前の状況としては右目の方が歪みは大きかったのですが、術後 1ヶ月くらいで歪みが改善されてきたのが実感できてきました。しかし 1年後の状況としては中心部の歪みが綺麗に無くなるまでには至りません。若干ですが「○」が「8」のように左右から押されたような歪みが残ります。それでも右目でデジカメのファインダーを覗いて「合焦した」ことがはっきり確認できるまでにはなりました。

左目はまぁまぁ

左目は右目ほど強い歪みはなかったので、改善もパッと実感できるほどではないのですが、アムスラーチャートを見て感じていた小さな歪みは少なくなり、よく見ると縦線に大きなうねり感じられる程度。一応は「良くなった」と感じられます。

布地のシワをアイロンで伸ばすようにはいかない

そもそも黄斑前膜ができる以前の健康な網膜の時にアムスラーチャートがどれだけ歪みなく見えていたのか認識がないので、手術後の効果を表現すること自体が難しいのですが、私の場合は術後1年の状況としては、直線が全く歪みなく見えるようには戻ることはなさそうです。
とはいえ、黄斑前膜の治療という肝心の目的はそれなりに効果を得られたと思います。

コンタクトレンズが不要となって万々歳?

手術の大変さとしては黄斑前膜の手術前に 10分もかからず終わってしまう白内障の手術。白内障手術で装着する眼内レンズは普通の保険適用の単焦点のものでしたが、この手術の効果は黄斑前膜の歪みの改善より大きいかもしれない効果がありましたし、意外な問題も明らかになりました。

白内障レンズによる視力回復の恩恵は大きい

私の場合、右目はやや手前、左目はやや遠く目に焦点が合うような度数のレンズを入れてもらいました。その結果、手元作業を除いて生活のほとんどの時間をメガネなしで過ごすことができるようになりました。 50年もの間、朝起きた時にまずメガネを探さないと周囲がよく見えなかったのが、いきなり周りがよく見える気持ちよさを毎日感じることができるようになりました。コンタクトを装着している際に強い風が吹くとゴミが目に入らないように結構気を遣っていたのもそんな心配はなくなり、プールや海にしてもコンタクトをした目をゴーグルで保護していたので、ゴーグルが外れた場合の緊張感があったのですが、そんなことは気にしなくてよくなりました。
手元作業時は元々強い老眼鏡を使っていたので、現在も老眼鏡(中近)を用いることに違和感はありません。

コンタクトをやめた想定外の影響 - 乱視の影響

コンタクトがなくなって万々歳と思いきや、意外なことが分かりました。あまり意識しなかったのですが、私は結構強い乱視があったのです。コンタクトレンズはハードタイプであったことで、乱視の矯正が自然とされていたので、視力が矯正された状態で乱視を意識することは皆無でした。
コンタクトレンズを外すと乱視があってもど近眼なので乱視を認識できるほどものが見えていなかったですし、もちろん老眼鏡には乱視の矯正も入っていたのですが、乱視を意識するタイミングがなかったのです。別の言い方をすると、「乱視の矯正なく一定の視力でものを見たことが無かった」のです。
それが白内障レンズで視力が得られるようになると、結構強い乱視が気になるようになりました。特に左目は上下に二重に見えてしまいます。ただ裸眼でも両眼で見ていれば乱視を強く気にしなくても良くはなりますが、手元用の老眼鏡と車の夜間運転用に乱視矯正を入れたメガネを作りました。
(手術前の(ど近眼時の)老眼鏡はどのみち役に立たなくないので作り直しは必要です。)

実は最大の効果? 網膜剥離の回避

今でも 3ヶ月に一回は手術をした病院での診察を受けています。もちろん視力の状態や網膜の回復は検査してチェックを受けますが、執刀医の関心事は網膜裂孔や剥離の発生のようです。もちろん手術中のように眼球にカメラ?を入れて眼球内をくまなく確認することはできませんが、瞳孔から覗ける範囲で入念にチェックしてくれます。もちろん「問題ないですよ」との診察です。

私のように強度近視の場合は網膜裂孔/剥離になりやすいようなので、それが診察で問題ない、と言われることは大いに安心して喜ぶべきことなのだろう、と思っています。

黄斑前膜の手術自体は「劇的ではない」もののトータルの満足度は高い

肝心の黄斑にできたシワはアイロンをかけるようには改善に至らず「残念」という思いは若干残りますが、それでも怖い思いをした手術を受け良かったな、と考えています。

  • ○ 片目で見たい際の歪みの軽減
  • ◎ 白内障眼内レンズによる視力の回復
  • △ 乱視
  • ◎ 将来的な網膜剥離のリスク軽減