フィルム写真のデジタル化に伴い、NAS 上に新たな大切な画像ファイルが増えています。
私の NAS は RAID 1 構成されているので、たまに HDD 不良/故障が発生しても RAID の機能でデータはしっかり保持されたまま新しい交換 HDD を装着すればちゃんとその機能は復活します。
でも、NAS が盗難や火事にあってしまったら、いくら RAID とは言っても復旧は困難でしょう。 盗難や火事にあわないように生活するのは大前提ですが、南海トラフや首都直下などの大地震に巻き込まれないぞ!と言うのはなかなか難しいことだと思います。
そうなると HDD を含む NAS が使用不能になることを前提としたバックアップが必要です。自宅が損壊することも想定すると、 NAS to NAS の遠距離地点バックアップなども一つの手段として考えられるでしょうけれども、企業のように複数拠点があるような場合は良いですが、個人では別荘を持っているような人以外は難しいソリューションだと思います。そうなると個人の NAS と併用できる現実的なバックアップとしてはクラウドバックアップしかないと考えています。
過去の記事ではチラッとしか紹介していませんでしたが、私は以前の NAS である TS-431 の頃から本当に失いたくないデータは丸ごとクラウドストレージにバックアップしています。そこで、現状のクラウドバックアップの状況(容量や費用)と点検するとともに、実際にリストアも行ってちゃんとバックアップ出来るか?時間は?など確認してみたり、利用しているクラウドストレージが新しいサービスを提供していたようなので、新しいサービスも検討してみたいと思います。
今回は今までのクラウドバックアップの利用状況のチェックとリストアの準備までを書き留めておこうと思います。
私の NAS ➡︎ クラウド バックアップ
バックアップ「元」 - QNAP のバックアップ機能 "HBS 3"
NAS からクラウドにバックアップする手段としては、NAS のアプリが提供されています。QNAP だと HBS3 (Hybrid Backup Sync 3) と呼ばれるアプリがあって、パソコンからブラウザで操作します。他社でも同様の仕組みが提供されていると思います。
HBS3 に関する QNAP のサイトはこちらなのですが、そこは個人利用ではとっても高機能すぎる?説明が多いので下図を見ていただければ「QNAP NAS で HBS3 を使うことで大抵のクラウドストレージにバックアップすることができる」ことがわかると思います。 私がデータバックアップ用に利用しているのは アマゾンの Glacier というサービスです。
バックアップ「先」 - Amazon の保存用クラウドストレージ "Glacier"
(下記の情報は特に断っていない限り 2016年当時に調べた理解をベースに記載しています。現在は色々変わっているかもしれません。この辺りは後から勉強し直してみようかと思っています。 )
"Glacier" という名称は「氷河」という意味らしく、データを凍結保管しておくというイメージのようです。それは頻繁なアクセスを想定せず、 Google drive のような UI でファイルの中を一つ一つチェックしたりする機能も無く、API 経由で利用する前提の、但し安い! というのが私の理解です。 API で利用する、ということは自分でプログラムを書くことを思い浮かべますが、API を利用して作られている HBS3 のようなアプリがあればそれを操作すれば特にプログラムが書けなくても全く問題ありません。
安い!のだけれど
上の Glacier の説明ページに
1 テラバイトあたり月額 1 USD から利用できる、データアーカイブのための長期保存用の安全で耐久性に優れた ‥
とありますが、安いと思いませんか? 8TB HDD で 12,000円だとして(まだそこまで安くない)、TB 単価は 1,500円です。Glacier は 110円/ドル として TB 単価は 110円/月。
もちろん考え方次第です。HDD だと 1年ちょっとで元が取れる計算ですが、その間電気代はかかりますし、何年かに一回は故障して交換は必要なので、無制限に容量当たり単価が低減することはありません。
とは言え、HDD に比べて直接的に安い、と言うわけではありませんが、本当に大切なファイルであれば、火事に見舞われても地震に襲われても大丈夫なデータセンターに預けておくことで少なくとも自宅 NAS 本体の被災の心配をしなくて済みます。
ということで、私は 4年間 Glacier に預けっぱなしにしています。
但し、上でも下線付きで書いたように頻繁なアクセスには不向きです。なぜなら一つはファイルの読み書きを簡単に行う機能はなく、まとめてバックアップ、リストアする前提になっているからです。あとはそれ以上に、アクセスにコストが発生するということです。つまりバックアップをしたりリストアをする場合には、上記とは別のコストが発生します。上記の TB 単価は預けておくだけのコストとなります。
というわけで、私の Glacier の利用状況を確認します。
現在の Glacier 利用状況
2016 年から Glacier に主に写真ファイルをバックアップしていていました。Glacier ではボールト (Vault; 地下貯蔵庫の意味) というものを作成してそこにバックアップデータを保管するイメージです。
その作成済み Vault ですが、QNAP の HBS 3 をで確認することができます。
ショック!な発見‥
ここには先ほどご紹介した貯蔵庫の Vault がリストされています。
まず私が確認したのが、NAS を TS-453Be に移行した後に写真ファイルを中心とした大切なファイルをバックアップし直したはずの Vault "Pro5300-20200924" のサイズがたった 2.9GB。写真関連で TS-431 の時に作成した Vault は 913GB。TS-453Be での Glaceir へのバックアップはうまく取得できていなかったのです😢
幸いなことに TS-453Be が健在なことと、その大半を占めるファイルは TS-431 のバックアップに含まれていますが、近いうちに再度バックアップを試みます。また TS-453Be でのバックアップがちゃんと取れていなかった理由はわかりましたので、これも次回以降どこかでご紹介します。
ということで、今回リストアの実行は TS-431 で 2016年から積み重ねてきた "Photo_full_20151129b" の Vault から行うことにします。そのサイズは 1TB 弱なので、(お金はかかるけれども)実測してみる価値はあると思います。
使用容量は?
私の Glacier に預けてあるデータの使用総量は上図にあるように、4個の Vault の合計である 1.2TB です。
費用は?
1 テラバイトあたり月額 1 USD から利用できる、データアーカイブのための長期保存用の安全で耐久性に優れた ‥
これは本当でしょうか?上記にあるように私の1.2TBの保管にかかったコストの実績を確認してみます。 AWS コンソールで確認してみます。
今年に入って Glacier へのアクセス(バックアップやリストア)は無いので、純粋な保管コストは "$6.18/1.2TB月 = $4.9/TB月"(税抜) で、謳い文句の 「1 テラバイトあたり月額 1 USD から」に比べるとはるかに高いです!
なお、AWS の肩を持つわけではありませんが、2016年当時の単価は現在の $4.9/TB月 より高かったはずですが、その時に HDD 容量単価との比較をしてさほど見劣りするような高コストではなかったと記憶しています。そこから毎年のように HDD 容量単価が低減するとともに、AWS もストレージコストを低減させているので、最新の Glacier と相まって1 テラバイトあたり月額 1 USDを実現させたのだと理解しています。AWS コンソールで 4年前のコストを確認することはできませんでしたが、Glacier 利用開始直後は確か 500GB くらいで徐々に容量は増えていったのですが、ずーっと $7/月くらいの請求(含む、若干の他のサービス)が続いていたと思います。さらに新しい Glacier でより安くなっているのであれば、後々 TS-453Be から新しい Glacier にバックアップしなおすべきでしょう。
Glacier からローカルにリストアしてみる!
今までたびたび NAS から Glacier へのバックアップは行っていましたが、逆のリストアつまりクラウドのバックアップからローカル HDD への復元ダウンロードを本格的に行ったことがありませんでした。これはリストア自体がバックアップより時間がかかることもあるのですが、上記のようにリストアするにしてもコストが発生するので、vault 全体をリストアするとなると全体の容量に対するアクセスコストが発生してしまい、ちょっと敷居が高かったのです。あと大きい阻害要因として、あとで説明しますが旧インターネット回線の遅さ。当時 500GB 程度のバックアップに1週間くらいかかっていたので、リストアでもそんなにかかってはやっていられない!という気持ちがありました。
しかし現在は高速安定のインターネット環境になっているので、ネット環境上はなんの不安もなく実施可能です。
リストアジョブの作成
リストアするだけの空き容量が NAS 上にあれば、QTS から HBS 3 を操作してリストアジョブを作成して実行することでローカルに復元できます。細かい話もありますが、基本はクラウド上のリストア対象貯蔵庫 (Vault) と、リストア先のローカルの場所を指定するだけです。
外付け HDD を準備する
私の場合、TS-453Be の空き容量が 1TB も残っていないので今回のテスト用に一時的に TS-453Be に HDD を USB 接続してリストア先を確保しました。今回 HDD を NAS に USB 接続するにあたっては結構昔から使っている「裸族のお立ち台」を接続してみました。現行モデルよりは古いですが、USB 3.0 で接続できるので TS-453Be のパフォーマンスにも十分対応できそうです。
物理的に NAS に接続したあとは、QTS で NAS のドライブとして認識されていることを確認してフォーマットすれば OK です。
せっかくなので、NAS 外付け 「裸族のお立ち台」HDD への 10GbE 経由のアクセスパフォーマンスを測定してみました。READ は比較的安定していますが、Write は 100数十MB/s から 200-300 MB/s までばらつきが見られましたが、このドライブにはキャッシュを設定していないのですが、RAID のオーバーヘッドが無い分十分なパフォーマンスは出ていて、リストアの際のダウンロードにおいてもさほどボトルネックになることはなさそうです。
ということで、今回リストアの準備作業までご紹介してみました。次回は実測!編です。
今回はクラウドストレージの一つ AWS の Glacier を紹介しましたが、AWS (Amazon Web Service, アマゾン ウェブ サービス)、 Amazon、Amazon.co.jp および Amazon.co.jp ロゴは、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。