KuriKumaChan’s diary

Kuri ちゃんと Kuma ちゃんの飼い主の独り言

ゆるくアマチュア無線 - JARD アマチュア無線技士養成課程修了を振り返ってみる(試験は合格)

先日修了試験を受けた直後に結果の分からないまま国試の過去問で腕試しをやってみたお話を書きましたが、電子メールではその後すぐ「第二級合格」の連絡が来ました(書面の通知が別途来るとのこと)。免許の発行はまだですが、余韻が冷めないうちに JARD アマチュア無線技士養成課程 (以下、e ラーニング) の経験事例報告(?)をまとめておこうと思います。前回の記事でその修了時の実力を晒してしまっていますが、e ラーニングの検討されている方の参考になるようにもう少し具体的な内容を紹介しておこうと思います。
このあと細かいことやネガティブなことも書きますが、基本的には「短期間で確実に第二級に合格したい」と言う目標は確実にサポートしてくれるものだったと言うことはハッキリ言っておきます。

自分の大きな勘違い

去年第三級を取得したあと第二級にチャレンジしようと思ったきっかけに、第三級の試験勉強の中で電気/電子回路に関して面白そうだ!と感じたことがあると言うお話を書きました。e ラーニング受講にあたって、テキストや講義ビデオで今まで以上に電気/電子回路の原理など詳しく説明があることをとても期待していたのですが、それは期待はずれでした。
もちろん第三級レベルよりはより詳細な電気/電子回路に関する法則を使ったり原理を用いて計算をする問題が出題されるので、その解説は当然されていますが、幾つも出てくる「なぜ?」とか「ホント?」に答えてくれるようなものではありませんでした。そりゃそうですよね。あくまで無線の資格試験に合格するレベルの知識を得るのが目的であって、電気/電子工学自体の勉強では無いのですから。また筆者も電気/電子工学のプロではなく無線のプロの方ですよね。
と言うことで、最初は e ラーニングの 370ページあるテキスト「アマチュア無線教科書」を読み込んでいたのですが、途中で雑な説明があったりフラストを感じることもあって e ラーニング自体に電気/電子回路などを追求することは諦め、去年購入した「図解でわかる はじめての電気回路 」に加えて「図解でわかる はじめての電子回路 」も購入し、気になったらこちらで勉強するようにしました。

ちなみに「電気回路 」は受動素子(抵抗、コンデンサ、コイル)を中心にした回路で、「電子回路 」は能動素子(コンデンサ、トランジスタ以上)を中心にした回路だそうです。無線工学を基準に考えると前者の本にはトランジスタの接地や一部増幅回路の話まで含まれるており、後者の本にはトランジスタの静特性や論理回路、変調と復調などが含まれる構成となっています。 もちろんこれを読めば全てがわかる!と言うものでもなく結構ネット情報にも助けられましたが、手元に置いておいて何かあればすぐに調べてみるのに役立ちました。

e ラーニングの概要

肝心の e ラーニングのお話ですが、どのようなものかという概要と受講の流れは JARD のサイトにありますのでそれをご覧ください。 www.jard.or.jp

勉強の柱は三つ

ここでは三種類の主な教材についてご紹介しておきます。

テキスト(紙、オンライン)

370 ページもある立派な紙のテキストと、その内容がオンラインで見ることができる仕組みが提供されます。私は最初はオンラインで読んでいたのですが、外出して読む機会もほとんどないし、マーカーや書き込みができる紙のテキストだけで勉強することになりました。
後でも書くように色々このテキストには言いたいことはあるのですが、カバーしている範囲としてはおそらく第二級の試験レベルを超えて一部一級レベルも含めて幅広くまとめてあるものだと思います。

映像補助教材

教室での講義風景の録画です。 JARD の受講者マニュアルでは以下のように説明されています。

平成27 年11 月に開催した2アマ集合講習会の模様を収録した映像 を視聴できます。 一部、eラーニングの講義内容と異なる場合があります。 また、映像を見ることは、eラーニングを進める上では必須(義務) ではありません。

おそらく最新ではないのでこれを e ラーニングの中心(必須教材)とはできないと言うことなのでしょうが、7年前のものを更新版を提供しないでそのまま使っている、と言うのはいかがなものでしょうか。
もちろんこれを中心に勉強しても修了試験には問題なく対応できますし、私も全ての映像をもとに勉強しましたが。

各種オンラインテスト

各章ごとに演習問題と中間試験があり、どちらも 5問程度のボリュームで、中間試験に関しては一度は満点を取らないと全体の判定試験を受けることができません。
演習問題と中間試験は何回でも試してみることができます。中間試験は合格したあと再び試して間違えたとしても合格が取り消されることはないので、安心して繰り返すことができます。
なお、これは推測ですが、中間試験はほとんど改定されていない古い問題ばかりで、演習問題にはテキストではあまり説明されていない新しい問題も含まれているようです。中間試験には解説がないのですが演習問題には解説があるのでそれを読めばわかります。

私の勉強方法

まずは一度最後まで通してみる

上の「私の勘違い」にも書いたように、最初はテキストを読み込むことから始めましたが、それだとなかなか進まないので、映像補助教材を視聴する全体スケジュールを作成して理解できても出来なくても最後まで一度通してみました。
もちろんその途中で演習問題や中間試験はやりますので、それらをクリアすることが次に進む唯一の条件とし、テキスト全てを理解することは考えない、として進めました。
その上で、何回も演習問題を間違えるとか、自信を持てないところを優先してテキストの精読や場合によっては映像補助教材を再度視聴すると言うことをしました。

1日に 1時間は映像補助教材を視聴するスケジュールを作る

会社勤めをしていないからといって、毎日ずっとこの勉強だけしているほど暇ではありませんので毎日 2時間程度の勉強枠をとっていました。その前提として映像補助教材を毎日 1時間見るスケジュールを立てました。
受講者サイトにある映像補助教材のインデックスページにおおよその時間の目安があるので、適当なところで区切ってスケジュールします。あとは巻き戻したりしないように集中して聴くことですかね。

自分の納得のためには「図解でわかる」シリーズ

直接の試験対策に関係ないと思いながらも、週に 1日くらいは無線から離れて上で紹介した「図解でわかる」シリーズで勉強したりネットの情報を漁ったりする日を作りました。
これはもちろん試験に直結しなくても、最低限の公式に繰り返し触れる機会にもなったし、やっぱり「なるほど!」と思える経験ができることはとても楽しいのでモチベーションの維持にもあります。個人的には今の段階では無線より電気/電子工作の方に強い興味があるんだろうなぁ。
e ラーニングの修了試験に合格する、と言うだけの目標であればこんなことする必要全くありませんけどね。

e ラーニングの良いところ

映像補助教材が勉強進行のペースメーカーになる

自分にとっては映像補助教材があったことが一番良かったと思います。テキストや市販教材だけではなかなかペース配分が難しいし、私のような性格だと深入りしやすいのでそれを避けることもできます。
もちろん講習会があれば同じようにペース配分してくれますが、スケジュール調整や移動の手間や時間を考えると利便性は e ラーニングには敵わないと思います。

映像補助教材やオンライン試験が試験範囲を示唆してくれる

全ての人に価値があるのがこの点だと思います。
以前にも書きましたが、合格させるのに高いお金をとっているのですから修了試験でボロボロ落としてはお話になりません。本来だったらテキスト全てを試験範囲にすべきだと思いますが、それでは難易度が高くなってしまうので映像で講師が示唆したところに注力したりオンライン試験を確実に解けるようにしておく、となっているところが一番の価値なのだと思います。

質問サイトがあって翌日には回答してくれる

もちろん試験に出そうなところだけではなく、テキストに書いてあることに関する疑問には専用サイトに質問受付の機能があり、翌日にはちゃんと回答してくれることも良かったと思います。私は 5回利用しましたが、だいたいちゃんと回答してくれました。

受講者交流サイトが提供される (HAMtte)

これは合格後に招待されるのですが、JARD では HAMtte と呼ばれる受講者交流サイトが提供されています。受信していると「HAMtte 交信パーティー」ってやっているあれです。そのサイトに「2アマ生専用」と言うコーナーがあって、第一級の国試の解説や一級レベルの無線工学講座、無線工学出題傾向分析など最新に更新された(ボランタリの)情報が共有されていて、これは第一級を考える人には魅力だと思います。

あえてネガティブな評価も(個人的見解です)

一言で言うと、教材が古くて改定も不十分!と言うことです。

映像補助教材 は古い

これは上でも触れましたが、さすがに 7年前のものをそのまま使っている、と言うのはどうなんでしょうか。一部補足的な編集もあったような気がしますが。。。
もしかしたら教室授業も中身がアップデートされていないから最新の映像を撮っても変わらないの?なんて勘繰ってしまいます。「補助教材だから更新しない」と言う論理なら、それは手抜きというものだと思います。

あと講義の時間が限られている、という理由も大きいでしょうけれども、講師自身が説明できないことはテキストを読むだけで済ます、ということが目につきました。そんなごまかし感ある対応などは見苦しいです。一方「この公式にたどり着くためには積分を使わなければなりません。その過程は私にはわかりませんのでとばしますが、この公式は大切ですから覚えてくださいね。」と説明している講義の方が納得感を持って聞くことができました。

肝心のテキストは

テキストは最後まで使い続けるものですが、それだけにたくさんの不満があります。

誤りが多く修正されていない

私の最初の質問はテキストの誤りの確認でした。早速オンラインの正誤表に反映してくれたのでその時は「対応早い!」っと思ったのですが、その後増えて 7個掲載されている内容を見る限り、過去の受講者だって気づいていた人はいるようなものばかりです。 もちろん紙のテキストは印刷工程があるので毎回修正再印刷などやっていられないのかもしれませんが、高いお金を独占的にとっているのだし、少なくとも正誤表も過去に指摘のあった誤りを新しい受講生には最初から公開していないのではないか?と勘繰ってしまいます。

説明も十分わかりやすいとは言えない

無線の国家試験というものが一般的な電気/電子工学に比べてニッチな市場なのだとは思いますし、市販の教材も似たようなものかもしれないがやや不満の残る品質に感じました。
例えば弧度法。最初に登場するのは第3章、正弦波交流の箇所。

1周期 (360°) を弧度法で表すと、2π [rad] (ラジアン)となり、この間の電圧•電流は一サイクルを表し...
その単位時間あたりの角度θの変化を角速度または角周波数といい、ω (オメガ)で表ます。

さすがにそれだけでは説明不足だと思ったのか、ずっと後の第6章、電子回路のページ下の注釈にもう少し詳しく弧度法の説明が記載されていて、なんなんだろう?と思ってしまいました。
極論を言えば弧度法という名前を知らなくたって「何かと公式には 2πが出てくるな」とか思いながらも暗記さえすれば良いと考えれば問題ないのでしょうけれども、高いお金をとっている割には品質は今ひとつ、と感じてしまいます。テキスト作成の最初の段階で、どれだけの基礎知識を含めるのか?といった議論をしておけばこんな中途半端にはならないと思います。逆に「三角関数、弧度法といった数学の知識にはあえて踏み込まず暗記項目中心に編成しています。興味のある方は別途専門書を参考にしてください。」と割り切った上でもっと安価に提供してくれても良いと思います。
言葉が悪いですが、何を理解してもらうか?で考えているというよりは、テキストの筆者が説明できることだけを書いている、という感じ。

試験範囲が分かりにくい

上に一級の範囲も部分的に含んでいる、と書きましたが、私はそんな中途半端な記述を増やしてテキストを厚くする必要ないのではないかと思います。これも講師が説明できるから書いているのかもしれませんが、映像を見ない限りどこか試験範囲かわかりません。
例えば、キルヒホッフの第二法則などはテキストに記載があっても第一級以上の試験範囲ということでビデオでは説明を省略しています。ここが主催者の本気度合いが疑われるところで、試験範囲対象外ならテキストに含めなければ良いし、含めるのであれば【今のところ試験範囲外】マークをつけた上でちゃんと分かりやすい解説を載せるべきだと思う。

再度結論

「よく理解できるようになって合格レベルに達する」ということはこのコースだけではかなわないかもしれませんが、「合格レベルに達する程度には理解できるようになるか、理解できなくても合格できるポイントはわかる」のは間違い無いですし、各種試験問題だけではなくテキストも理解するようにしておけば国試だって受かるようになると思います。