今回は、事件を知らされた直後に謝罪とともに被害などの状況の説明を受けるために私が被害者側を訪問したものの、被害の具体的な説明よりも私への請求及び支払いの話のみを先行して進める先方に強引さを感じ取り、自分一人では適切な対応を取るのが難しいと考えて弁護士に相談した経緯を中心にお話ししようと思います。
事件を知らされる
そもそも保証人の私が A の悪事を知った経緯から簡単に説明しておきます。
ある日 A の母親から私に連絡がありました。A の実家に会社の役員たちが来て、A の母親に悪事の状況を説明するとともにその場で母親に対し、 A に代わってその支払いをすることを求めたそうです。会社側の話としては「お母さんが被害額を支払ったら保証人には連絡しない」と言ったそうです。驚いた母親は年金暮らしでそような金額を払うことはできず、すぐに保証人である私に電話してきたのです。このことは物事を中途半端に隠したまま進めるよりは結果的に良かったのではないかと考えています。
被害者を訪問 - 謝罪とともに何が起きたのかを少し知る
当時私はまだ会社勤めをしていたのですが、連絡を受けたその翌日に直接その被害者である自動車会社を訪ねることにしました。まず A の行為に謝罪し、本当に A が被害を及ぼしたのであれば被害に対するある程度の支払いの意思があることを伝えました。アポなしの訪問でしたが、A の所属部門担当役員が応対してくれました。被害の全貌に関して十分調査しきれていないと言うことでしたが、口頭ベースで横領した手口をざっくり説明してくれ、さらに A は元々顧客に対して適切な連絡を取らないことにより顧客から苦情を受けることがあるなど、日常の仕事ぶりも褒めたものでは無かったこともわかりました。一応 A を「素直な少年」 (だったはず) の頃から知っていた私としては本当に驚きでした。会社としては被害の整理を弁護士とともに進めていると言うことなので、説明ができるようになったら私の携帯電話に連絡をもらうことで帰りました。
なお、当然この時点で被害者は警察にも通報済みと言うことでした。
弁護士のアドバイスを受ける
どう考えてもある程度の賠償責任は逃れられないだろうという認識のもと、身元保証人としてできるだけ正しい認識をもとに対応していたいと考え、次回紹介する法律相談センターを訪ね弁護士に相談しました。「身元保証に関する法律」と言う法律があること、保証人としての責任は逃れられないこと、裁判になればその法律をもとに損害賠償額はいろいろな事情を考慮されることなど説明を受けました。身元保証人に関してはネットで事前検索してはいたのですが、自分のような状況を前提とした話はほとんど見当たらなかったので、まずは自分の状況を確実に理解してもらうための資料の準備をしていきました。自分が最低限知りたいことに関しては説明をしっかり受け、必要であれば相談に乗ってくれた弁護士と契約を結べると言うことを確認して帰って来ました。
2度目の訪問 - 詳細説明無しにいきなり出された支払い合意書
2回目はその約 1ヶ月ほど後に被害者から連絡を受けての訪問でした。
正直 2回目の訪問をするまでは、A は悪事を行ったこと自体はおおよそ (会社の主張全てではないが) 認めていたこと、弁護士から私の責任自体は回避できないことを知らされていたので、ある程度の支払いは不可避なのでさっさと済ませてしまおうと言う考えでいました。幸か不幸か、一生に一度は外車 (とは言ってもゴルフですが) に乗ってみたいと積み立てていたお金があり、それを支払いの足しにしようかなんて気持ちなっていたのは事実です。
「お話しできる準備ができました」と電話連絡を受けての 2回目の訪問だったのですが、いきなり出て来たのは私の被害者に対する支払いの合意書のドラフトでした。
被害の整理を聞くつもりでやって来たのに、被害に関する新たな説明は無いまま私にいきなり提示されたのは損害賠償に関する支払い合意書のドラフトでした。相手の話の勢いで仕方なく合意書の趣旨の説明を受けると、算定中の被害金額全額をいつ支払えるか?一括で払うか分割か?分割なら公正証書を作成する必要がある、その費用は私もち、などなど。さらに、会社側は弁護士のアドバイスのもと進めていると言うことで、身元保証人は元々二人いた一人目の A の父親が他界したので残された母親が身元保証人の責務も相続しているから私と A の母親に支払いの責任があるとのこと。
完全に想定外の話の順番に面食らってしまいましたが、一旦その合意書ドラフトは持ち帰らせてもらうことにして、私がまず知りたかった損害の具体的な説明を聞きたいと私が催促すると「一件一件はまた別の機会に」とのこと。しかしその説明を受けるのが今日の主たる目的だとこちらの認識を伝えると、そこで初めて資料を取りに行き(説明するつもりはなかったと言うこと)、初回訪問時に見せてもらったとほぼ同じと思われる一覧表が提示されました。その時点で被害者は私に被害内容をしっかり説明することよりも、何はともあれ私に支払い合意書に捺印させることを優先しているのだと理解できました。
一覧表には一件に対して1,2行の数字と説明しか載っていませんが、そのうちいくつかを口頭で説明を受けました。領収書を偽造したとか自動車整備の内容を登録する会社のシステムのデータを改竄して自分のやった現金横領を隠そうとしたとか、話を聞いていて確かに「あぁ、本当に悪質なことをやっていたんだな」と思いました。しかし基本的には1回目とあまり変わらないレベル、口頭の説明も「これは修理した代金を受け取らないまま車を返してしまった (!会社は後からでも請求しなかったの?)」と言うレベルの情報しかありませんでした。
その日私の言える言葉としては「持ち帰らせていただきます。一週間以内をめどにご連絡します。」しかありませんでした。
強まる不信感
帰宅してからも 2回目の訪問でいきなり合意書のドラフトが出されたことに強い不信感で頭がいっぱいになりました。最初にある程度の支払いはするつもりがあると伝えていましたが、さっさと被害を回収したいと言う思いからなんとしても連帯保証人の私が支払うという文書を作りたいというのは分からないでもありません。しかし 1ヶ月近く経ってドキュメントで被害を説明したものは作成中の一覧表のみ。口頭の説明でも金額はまだ確定していないとのこと。しかも私が催促しなければその説明すら後回しにしようとしていたことに、このまま一方的に進められては自分の身が危ない、と強い危機感を抱きました。
後々裁判で分かったことですが伝票類も残されていない取引が多くあったということなので、しっかりした説明をできなかったのかもしれません。しかしそうであったとしても、例えば、
「詳細な金額の確定には時間もかかります。こんな状況になったのは会社としても管理責任があります。大枠の金額は A も認めたのでそれを被害金額として折半ということで半分支払っていただけないでしょうか」
と言われていたら、きっと私は支払っていたのではないかと思います。しかも会社に対する不信感を持ち始めていた私に、会社は嘘をついていたのです。それは再度弁護士に相談して初めてわかったことでした。
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