KuriKumaChan’s diary

Kuri ちゃんと Kuma ちゃんの飼い主の独り言

デジタル簡易無線に挑戦 - 胸を張って無線機を友人に貸し出すために -「無線局の運用の特例に係る届出書」

前回最後に書いたように、関東総合通信局で登録状を受け取った際に渡されたチラシの最後に書いてあった最後の一行が、私のような個人登録局(利用者)にとって大きく引っ掛かったので調べてみたというお話です。
なお今回の内容についてはいくら「調べた」とは言っても、私自身に無線やその行政の世界にさほど深い知識や経験がある訳ではないので、そもそも間違っていたり的外れなことも書いてあるかも知れません。また法律にも言及しますが私は法律の専門家でもありません。しかしそれでも私の調べた範囲から得られる事実としては、ある程度主張しても良いのではないかと思い書きました。

デジ簡(登録局)はどのような前提で周知されているのか?

なお、デジタル簡易無線局(登録局)は、法令で定められた手続きを取った場合の他、他人への無線機の貸与は禁止されています

そんなことどこに書いてあったっけ?? 👈これが今回の出発点。

そもそも正しく「登録」して「開設」すれば自由に使ってイイんじゃないの?

総務省「デジタル簡易無線(登録局)について」のトップページを見ると下図のように記載されています。

信越総合通信局 のサイト。「登録局は、レンタルやレジャー使用、不特定の者との通信も合法とした」って書いてある。

登録局は、レンタルやレジャー使用、不特定の者との通信も合法とした」と言う文章を私が最初に読んだときには、

ほう、無線機のレンタル業者の前提やレジャーでの利用を想定しているんだ!

と「レンタル業者が貸し出す」利用形態と「個人がレジャーで利用する」利用形態の二つを大きく想定しているのだと思いました。その背景には「デジタル簡易無線 登録」で Google 検索すると山のようにレンタル業者の広告が出てきます。一見レンタル業者に見えないデジタル簡易無線やライセンスフリー無線のハウツー記事のようでも実際はレンタル業者ということもあります。また個人で人に貸す場合にはレンタルという日本語は普通使いません。レンタルとは一般的な日本語ではビジネスの一業態を示すものですから、レンタルという単語はレジャーにはかからない並列の利用シーンと理解できます。。
さらにレジャーでの利用ってアマチュア無線とは別の世界を想定している(アマチュア無線はあくまでもアマチュア無線業務)わけですから、世の中一般でレジャー利用と言ったら特定小電力無線と同類だ(つまり複数台を買ったら直ぐに仲間と使える。ただし登録はするとして。)って思うのが大多数では無いでしょうか。
ところがこの点を意識して色々デジタル簡易無線/登録局をネットで調べていると、複数台購入した、と言う人はそれなりにいるのですが、複数台を友人等に貸し出して楽しんでいるという具体的な記事はなかなか見当たりませんし、メーカーもこの点については曖昧なまま紹介しています。

ケンウッドのデジ簡紹介ページ。とても「一人一人登録しましょう」とか個人貸し出しもレンタル手続きが必要とかは読み取れない。

各メーカーの表示

メジャーなメーカーの製品ページを中心に「個人登録局の友人への貸し出し」に関する記述があるか眺めてみました。製品ページに何らかの登録手続きページへのリンクがある場合はそれをたどってみました。(登録申請手続き自体の説明は省きます。) ただし、見落とし等があるかもしれませんのでその点はご容赦ください。

アイコム

IC-DPR7S のページ。特に知人への貸与についての記述はない。左下ボタンからのリンク先には登録手続きしか記載がない。

八重洲無線

八重洲無線のデジ簡紹介ページ。確かに人に貸して良いとは書いていないけれど...
そもそもデジ簡は個人向け製品には位置付けられていない様子。SR741 のページにはこの登録の図だけ。SR730/740のページには手続き関連の記載なし。

アルインコ

レジャーユースを掲げているけれど、貸し出しに関しては特に記載はない。

モトローラ

レジャーユースは掲げられているけれど、説明は登録手続きまでで貸出に関する記載なし。

ケンウッド

ケンウッドは「登録後の各種申請」ページが用意されており、そこに友人への貸出について記載がある。

ありました!ケンウッドだけはしっかり項目を立てて書いていました。「⑥登録人が、友人等に登録局を使用させた場合の手続き

友人等、登録人以外の人に登録局を使用させた場合は、登録人は、「無線局の運用の特例に係る届出書」の提出が必要です。

これを読めば、なるほど友人に使用させてもいいけれども届出が必要なんだな!と明確に分かります。
(ケンウッド偉い〜!)

「法令で定められた手続き」とは何か? 特例手続き

最初に立ち返って、私が関東総合通信局でもらったチラシに書いてある、

なお、デジタル簡易無線局(登録局)は、法令で定められた手続きを取った場合の他、他人への無線機の貸与は禁止されています

の「法令で定められた手続き」とは何なのでしょうか?

各総合通信局の説明

Google でこの辺りを検索すると本家本元の総務省のサイトではなく各総合通信局のデジ簡登録局説明ページが別々にヒットします。

関東総合通信局のデジ簡登録局のサイトより

総務省|関東総合通信局|デジタル簡易無線局(CR)登録局のページ

信越総合通信局のデジ簡登録局のサイトより

総務省|信越総合通信局|デジタル簡易無線(登録局)について

関東総合通信局および同様の記述をしている他の総合通信局の記載を見た場合には届出書のフォームも記載令もあるので、「これだな」と分かります。
一方、信越総合通信局の記述では「なるほど事前と事後にやるべきことがあるんだ!」とは分かりやすく書いてありますが、肝心の届出書のフォームが無いのが不親切です。
しかしいずれにしても「法令で定められた手続き」とはこれらで書かれている「届出」のことのようです。

法令の定めを調べてみる - 電波法

上記の関東総合通信局の文面はともかく、信越総合通信局の文面でも「レンタル」という単語があえて用いられているので、いったいどんな法律に基づいているのだろうか?と不思議になり、大元の法律を調べてみました。その法律自体は下記のアイコムの「デジタル簡易無線局の登録申請について」のページから手繰っていくことにしました。

アイコムの「デジタル簡易無線局の登録申請について」のページより
この部分は電波法の「罰則」の条項で、「登録がないのに、...無線局を運用した者」が罰則の対象となると書いてあります。そして "..." の部分に例外の規定が書かれており、それが電波法の下記の条項だとされています。

  • 第七十条の七:(非常時運用人による無線局の運用)
  • 第七十条の八:(免許人以外の者による特定の無線局の簡易な操作による運用)
  • 第七十条の九:(登録人以外の者による登録局の運用)

そこで「e-gov 法令検索」で電波法の該当部分を調べてみたら以下のようになっていました。

https://elaws.e-gov.go.jp/

登録局では 70条9 と70条7 が関連するらしい

素人ながら軽くサマってみると条文の順序が逆転しますが、

  • 第七十条の:(登録人以外の者による登録局の運用) 赤枠部分

    1. 登録局の登録人はある前提のもと、登録局を自分以外の人に運用させることができる。
    2. 登録局を自分以外の人に運用させた場合は、第七十条の七第二項及び第三項(青枠青丸部分)の規定が適用される。

次に

  • 第七十条の:(非常時運用人による無線局の運用)青枠部分
    1. ・・
    2. 遅滞なく無線局を運用する自己以外の者(非常時運用人)の氏名、期間等を総務大臣に届け出なければならない。
    3. 非常時運用人に対して必要かつ適切な監督を行わなければならない。

ともっぱらフツーのことが書いてありました。"70条9" では極端な言い方をすると「人に迷惑をかけなければ登録局を自分以外の人に運用させることができる」とし、"70条7" はもともと非常時における特例規定なので事前の申請などは想定せず「事後に遅滞なく届出してね」、ということでした。しかも電波法にはレンタル(業者)なんて一言も書いていません!
つまり、メーカーも総務省も法律でレンタル(業者)の定めがあるからではなく、デジタル簡易無線の検討段階からレンタル業者を前提にしてきた経緯があるからレンタル」という言葉を全面に出しているのではないか、と私の中では結論づけられました。

結論

まず第一に、法令上「レンタル」なんて言葉は用いられていません。ですので個人登録局を含む利用者への説明としていちいち「レンタル」という言葉を持ち出すこと自体が不親切なのだと思います。
その上でそれぞれの発信情報を見比べると、関東総合通信局のサイトにある「4 無線局の運用の特例に係る届出書」の記載が必要十分なのだと分かりました。「レンタル」という言葉を用いていませんし、実際の届出フォームや記載例もありますし。

 登録人以外の者により登録の無線局を運用させた場合には、届出が必要です。
 なお、登録人以外の者による運用は、当該登録局の有効期間内に限るとし、登録状の内容及び無線機の適正な運用について十分説明を行った上で行ってください。

ただし!これだけでは分かりにくいのです。なぜなら行政のデジ簡に関わる他のサイトでは「レンタル」を全面に押し出しているから、それらを見た上でこのページだけを見ても個人にも適用されるかどうかは懐疑的に見てしまうのです。 ここに 「個人登録局が知人に貸し出す場合もレンタル業者が貸し出す場合も」と言った言葉があればよかったのにと悔やまれます。

一方ケンウッドの「登録人が、友人等に登録局を使用させた場合」という表記は他のどこにもない個人登録局を前提にした記述で一番好感を持てます。ただ、実際のフォームや提出先まで言及していないのが残念。このままでは身動き取れない個人が大多数だと思います。もしかしたらページ作成時に関東総合通信局のページが無かったのかも知れませんが、今となってはそこへのリンクがあれば完璧でしょう!

分かったけれど、今のままで良いの?

結論は分かったけれど、行政もメーカーも関連団体も皆今のままの個人ユーザー向けの情報発信で良いのでしょうか?
まず行政に本気で考えて欲しい。第一段階として、

  • 確かに簡易無線のデジタル化の段階で、利用者数/需要規模の想定は必要でレンタル業者経由の利用が大きいことは各メーカーが試算しているので、「レンタル業者」のことを前提にした手続きを考えなくてはならないのはよく分かりますしそうすべきでしょう。
  • しかし、「レジャー使用」を掲げるのであれば、そこにはレンタル業者に頼らない個人利用者も当然存在するはずであり、個人利用者は自分専用無線機しか買わない訳ではないのだから、個人利用上の貸与のあり方も明示すべきでしょう。

  • もしレンタル業者のボリュームに比べて個人利用の台数が圧倒的に少ないのであって個人の貸与の手続きを行政がまともに受けたく無いのであれば、電波法を改正して個人的な貸与ははっきり自由とすべき。

  • 個人的な貸与も同じように管理統制したいのであれば、個人利用者に分かる普通の日本語で明記すべきだと思います。

その次の段階として、

  • 届出の電子化なぜしないの?と思います。

おそらくヒトモノカネの原因だと思いますが、提出先として郵送を前提とした住所が書いてあります。レンタル業者にしろ個人利用の知人への貸与にしろ、この制度は登録者以外の利用者を広げることを想定しているのですから、特例であれその届出は敷居を下げるべきだと思います。デジタル簡易無線の登録などに利用されている「電波利用 電子申請・届出システム」だとマイナンバーカードなど電子証明書が必要だという手間があるので「気軽に利用できる」訳ではありませんが、少なくとも登録者は登録や開設でマイナンバーカードを使っている訳ですから、届出システムでの特例届出ができるようにしてもらいたいものです。郵便物を受け取る側だって大変だと思うのですが。。。

その上でメーカーにも関連団体にも主体性を持って利用者(顧客)が知らず知らすのうちに法令違反をしてしまうような案内はやめて欲しい。行政がハッキリしないから忖度して自分たちも曖昧な姿勢を取るというのはあまりにも主体性がないのではないでしょうか。「レンタル」という言葉をレンタル業と個人の貸与の両方に適用させようというような記述にも無責任さを感じます。
そんな中でまだケンウッドだけは「友人等に登録局を使用させた場合」という現実を普通の日本語で説明していることに好感を得ました。
しかし、ケンウッドしかそのようなスタンスをとっていないところに、もしかしたら業界の闇があるのではないかと勘繰ってしまいます。


しかし、こんな現状になったのはそれなりの理由があるんでしょうね。どこかで物事を曖昧にしようという動きがあるのでしょうか?それとも個人利用は眼中に無い?


ということで、友人とキャンプに行って堂々とデジ簡を貸して遊び、その後には届出書を(やむなく)郵送してみようと思います。